知的財産のゆくえ
特許、商標、著作権、デザイン、ブランド。
あなたが残した「知的財産」は、
あなたが亡くなった後、どうなるのでしょうか?
「形のない財産」だからこそ、
相続のときに見落とされることがあります。
相続・事業承継・知的財産を、 「その後」まで考えておく。
知的財産は、
「消えてしまう」のでしょうか?
財産としての知的財産は、 相続の対象になり得ます。
たとえば、個人で事業を営んでいる方が、
自分の名前で商標を登録していたり、
特許権を持っていたり、
著作物を制作して著作権を持っていたりする場合。
その方が亡くなったからといって、
それらの財産的な権利が
直ちに「無かったこと」になるわけではありません。
しかし、その後誰が管理するのか、
誰が事業を引き継ぐのか、
ライセンス収入を誰が受け取るのかなどを
決めておかなければ、
相続人にとって大きな負担になることがあります。
権利者が亡くなったとき、
何が起こるのか。
権利が相続の対象になる
特許権、商標権、意匠権などの 財産的な権利や著作権は、 相続財産として扱われる可能性があります。
誰が引き継ぐのかを整理する
相続人が複数いる場合、 権利を誰が取得するのか、 共有にするのか、 事業承継とどう結び付けるのかを 考える必要があります。
権利を「その後」も管理する
登録情報、更新・維持、 ライセンス契約、収益、 著作物の利用など、 相続後にも管理が続きます。
どんな「知的財産」が
問題になるのでしょうか?
特許権・実用新案権
発明や考案についての権利。
個人事業主や発明家が保有している場合、
相続後の権利者変更や、
実施・ライセンスなどの管理を
考える必要があります。
商標権
商品名、サービス名、ブランド名などを
保護する権利。
事業そのものを承継する場合には、
「ブランドを誰が引き継ぐのか」
という問題にもつながります。
意匠権
製品のデザインなどを保護する権利。
デザインを利用して事業を続ける場合、
権利の帰属を明確にしておくことが重要です。
著作権
イラスト、写真、文章、音楽、
動画、プログラムなど、
クリエイターにとって身近な権利。
著作権は創作時に自動的に発生するため、
「登録していないから相続できない」
というものではありません。
著作権には、
少し注意が必要です。
著作権と「著作者人格権」は別のもの。
著作権には、財産的な権利としての側面があります。
そのため、著作権者が亡くなった場合、
その著作権は相続の対象となり得ます。
一方で、
著作者人格権は著作者の一身に専属し、
譲渡することができません。
ただし、著作者の死亡後も、
著作者人格権を侵害することとなるべき行為について、
著作権法上の一定の保護があります。
また、著作権については、
相続による移転登録の制度があります。
法定相続分による承継については
登録が必須というわけではありませんが、
遺産分割などによって法定相続分を超えて
著作権を取得した場合などには、
第三者との関係で登録が重要になることがあります。
「知財」にも、
相続税が関係することがあります。
目に見えない財産だからといって、 相続税と無関係とは限りません。
知的財産の「価値」をどう考えるか。
相続税は、現金や不動産だけを対象とするものではありません。
国税庁は、特許権、実用新案権、意匠権、
商標権などについて相続税・贈与税の評価方法を定めており、
著作権についても評価方法が定められています。
たとえば、特許権については、
その権利から得られる収益などを基礎として
評価する方法が用いられます。
著作権についても、
著作物から得られる収入などを基礎として
評価する仕組みがあります。
※相続税の具体的な評価・申告については、 個別の財産状況を踏まえて税理士等の専門家にご確認ください。
何も準備しないままだと、
どんな問題が起こるのでしょうか?
権利の存在を家族が知らない
特許、商標、著作権などが存在していても、 家族がその存在を知らなければ、 相続財産として把握できない可能性があります。
誰が管理するのか決まらない
相続人が複数いる場合、 誰が権利を取得し、 誰が管理・活用するのかを巡って 意見が分かれることがあります。
ライセンス収入などを見落とす
第三者へのライセンス契約などがある場合、 契約関係や収入の存在を把握できないと、 相続後の管理に支障が生じる可能性があります。
相続税の把握から漏れる
「形がないから財産ではない」と考えてしまうと、 相続財産の把握そのものを誤る可能性があります。
事業承継がうまく進まない
ブランド名、著作物、特許などが 個人に帰属したままだと、 事業を引き継ぐ人と権利者が 別々になってしまうことがあります。
契約・データが見つからない
ライセンス契約、原稿、制作データ、 登録番号、更新情報などが 整理されていないと、 相続人が後から調査する負担が大きくなります。
今のうちに、
何を整理しておけばよいのでしょうか?
知的財産の相続は、
一つの専門分野だけでは完結しません。
「知財 × 相続 × 事業承継」
知的財産の相続では、
権利そのものだけでなく、
相続人、遺産分割、契約、事業承継、
相続税などを横断して考える必要があります。
行政書士として、
相続に関する書類の整理や、
遺言・遺産分割に関する書類作成、
知的財産に関する登録・契約関係の整理などを
お手伝いしながら、
必要に応じて弁理士・税理士・弁護士等と連携して
サポートすることが重要です。
⚠ 専門家の役割を分けて考えることも大切です。
特許・商標・意匠等の産業財産権について、
特許庁への出願等の専門的な手続には、
弁理士の専権業務が含まれます。
当事務所では、業務範囲を適切に区分し、
必要に応じて弁理士・税理士・弁護士等の専門家と
連携して対応することを基本としています。
「知的財産の相続」
一度、整理してみませんか?
「特許や商標を持っているけれど、
自分が亡くなったらどうなる?」
「自分の作品の著作権を、
誰に引き継ぐのがよいのだろう?」
「事業を子どもに引き継ぎたいけれど、
ブランドや著作物はどうすればいい?」
そんな疑問からでも構いません。
現在の権利関係やご希望を整理し、
必要な準備を一緒に考えます。
参考:公的機関・法令等
- 文化庁「知的財産権について」
- 文化庁「著作権の登録手続き」
- 文化庁「著作権に関する登録制度についてよくある質問」
- 特許庁「権利の移転等に関する手続」
- 特許庁「相続による移転登録申請書」
- 国税庁「特許権、実用新案権、意匠権、商標権等の評価明細書」
- 国税庁「財産評価基本通達」
- 国税庁「相続税の計算」
※本記事は、知的財産と相続に関する一般的な情報提供を 目的としたものです。 個別の相続税、権利評価、遺産分割、知的財産権の管理・承継等については、 具体的な事情に応じて税理士、弁理士、弁護士その他の専門家への ご相談が必要となる場合があります。